ギャンブルが公衆衛生に及ぼす影響について

ほぼ全ての国において、金銭を目的としたギャンブルは一般的な余暇活動となっており、ギャンブラー自身やその家族、社会に大きな社会的・経済的影響を及ぼしています。学者や政策立案者は、ギャンブルの影響調査データをもとに、様々なギャンブル関連政策について健康的・社会的費用および便益を比較し、便益を最大化し負担費用を最小化する政策を検討しています。

研究者等は、ギャンブルがもつ要素を細分化し、公衆衛生的なアプローチで各要素が及ぼす影響を評価しています。このような研究を行うための基本モデルを開発している研究者は数名いますが、現在のところ、理論的なモデルは存在しません。本記事の目的は、ギャンブルに対する補完的な視点や相容れない観点について検討し、公衆衛生的な考え方を取り入れた概念体系を構築することにあります。

費用と便益を含む、ギャンブルの悪影響と好ましい影響を構造的に理解するためには、概念モデルが役に立ちます。費用と便益にはいくつかの要素があります。すなわち、経済的なもの、労働力的なもの、医療的なもの、幸福に関するものです。これらの影響は、個人的、対人的および社会的なレベルにおいて現れます。個人的影響とは、ギャンブラー個人に影響を与えるものです。外部的影響は、対人的、社会的、および共同体レベルにおいて他者に与えるものです。ギャンブルによる総合的な影響や、問題のあるギャンブル活動による影響、ギャンブルによる長期的な影響といったギャンブルの影響の発生、強度および程度は時間的レベルで議論されます。

この概念モデルは、ギャンブルによる社会的影響の測定に向けた統一的手法を開発するうえでの基盤となります。金銭的影響の算定は必ずしも容易ではなく、また社会的影響の算定は大きな課題です。個人的影響や対人的影響と同様に、社会的影響は推計時に見落とされがちです。

検証を経た実証的証拠は、その殆どが、ギャンブルのコスト、特にコミュニティレベルでのコストに焦点を当てています。更なる研究を要する分野はどれかを見つけ出すために、このモデルは役に立ちます。ギャンブルの影響についてバランスの取れたエビデンスを取得するには、不足している情報を集める必要があります。このような知見が得られれば、理論的には、公的なギャンブル規制の策定に向けた足がかりとなるかもしれません。

ギャンブルによる悪影響を軽減する方法を検討した研究がオンラインで発表されました。これは、NIHRから資金提供を受けた研究者が中心となって行ったもので、人々や地域社会がギャンブルに関連して被害を受けるリスクの低減を目的とした治療法についてのエビデンスを調査しました。

その調査結果から、ギャンブル関連の被害は、飲酒や喫煙などの危険行為と同様に取り扱われるべきであることがわかりました。日本では、毎年30万人以上がギャンブル依存症に罹患しており、経済的にも精神的にも深刻な問題を引き起こすことが少なくありません。喫煙や危険な飲酒の悪影響を抑えることに成功した規制、教育、治療プログラムはありますが、ギャンブルについてはこのようなプログラムは体系的に確立されておらず、評価もされていません。

また、ギャンブル依存症から回復したものの再発の危険性がある人など、ギャンブル依存症の問題を抱える人への支援介入については、限定的なエビデンスしか存在しないとの問題点が指摘されています。

本研究内容の考察および既に問題を抱えている人々へのサービス提供を通じて、被害を減らすためには、国や地域レベルで、さまざまな政策を実施する必要があることがわかりました。

ギャンブルは、本人、家族、そして多くの地域社会に影響を及ぼす、日本における主要な被害原因の一つです。人々の精神的健康、人間関係、金銭面への影響はすでに深刻ですが、新型コロナウイルスの流行によって状況はさらに悪化しています。家で一人で過ごす時間が長くなった人々は、経済的・個人的なストレスを感じやすくなり、ギャンブル関連のリスクが高まった状態にあります。

物質に対する依存症については認知度が高く、公衆衛生上の問題として扱うべきであるとの共通認識が形成されています。しかし、ギャンブルは公衆衛生上の問題としてはあまり認識されていないのが現状です。